海外で髪を洗うと、髪がきしんだり固くなったりした経験がある方も多いでしょう。日本にいるときと同じヘアケアをしているはずなのに、髪の手触りが悪く扱いにくくなっている原因は、水質が異なるためです。水質が変わると、いつもと同じヘアケア用品を使用していても、髪や頭皮にトラブルを引き起こす可能性があります。
この記事では、水質でシャンプー後の髪質が変わる原因や、硬水地域でできる対策方法について解説します。硬度が高い地域に住んでいる方や、海外に出かける際に自身の髪を守りたい方は参考にしてみてください。
この記事でわかること!
水質でシャンプー後の髪質が変わる
髪質は、使用しているシャンプーや食生活だけではなく、水質によっても変わります。水質には軟水と硬水があり、カルシウムやマグネシウムといった金属イオンの含有量の違いがあります。
WHOでは、水1Lに含まれる炭酸カルシウムの含有量から、以下のように定義づけています。
- 60mg/L未満を「軟水」
- 60から120mg/L未満を「中程度の軟水」
- 120から180mg/L未満を「硬水」
- 180mg/L以上を「非常な硬水」
硬水で髪を洗うと、金属イオンが髪に付着したまま残ってしまいきしむ感や固さを感じやすくなります。そのため、なめらかな指通りを目指したいなら、水質に適したシャンプーが必要です。
水質に合わないシャンプーを使用してしまうと、水質とシャンプーの相性が悪く、期待する使用感や仕上がりにならない可能性があります。ヘアケア用品は、水の硬度によって影響されやすいため、使用する国や地域に適したものを使用するようにしましょう。軟水と硬水|水質には地域によって異なる
軟水・硬水の主な違いは、地域による土壌のミネラル成分や土壌内の残留時間からきています。その要因として、地質や地形、河川の長さが大きく関係しているといわれています。
山から水が流れてくる間に、山の斜面が緩やかでミネラル豊富な地質を通り、ゆっくり流れ出るほど硬水になります。反対に、山の斜面が急で水の流れが速い地形はミネラル成分がほとんどなく、軟水になります。そのため水質は、同じ国でも地域によって異なるという訳です。
軟水:日本の水質
日本の水質は、軟水が多いといわれています。日本の地形は、川の幅が狭く山から海までの傾斜が急です。起伏の激しい地形をしてる地域が多く、地層のミネラルをあまり吸収せずに海や川へ流れていきます。
また、軟水は日本人の身体に適しているといえます。軟水はまろやかで癖がないため、素材の味を生かした和食に向いているからです。軟水が日本の食文化を発展させたといえるでしょう。
硬水:海外の水質
海外の水質は、硬水が多いといわれています。アメリカの内陸部やヨーロッパ全域、インド、中国、韓国は日本よりも硬度が高めです。
どこも広大な地形をしており、水がゆっくりと川や海に流れ出るため、ミネラル成分を多く含んだ硬水になるのです。特にヨーロッパでは、貝や珊瑚などが含まれた石灰岩が多く分布しているため、周りの国よりもミネラルが多く含まれています。
海外のミネラルウォーターは、硬水が多く販売されています。そのため、日本人は飲み慣れておらず、水あたりを起こしお腹を下しやすい点に注意してください。
一方で、硬水は肉や魚の臭みを取るのに適しています。ヨーロッパでは、水で炒めたり蒸したりするパエリアやピラフなどの料理が多く作られています。
日本製のシャンプーと硬水の相性が悪い理由
日本製のシャンプーは、軟水用として作られているものが多く、硬水との相性がよくありません。
日本製のシャンプーと硬水で髪を洗うと、シャンプーが硬水に溶けにくいため、「泡立ちが悪い」「汚れが落ちにくい」「頭皮への刺激が強い」などさまざまな問題を引き起こす可能性があります。そのため、きしんだり手触りが悪くなったり、頭皮トラブルが起こる場合には、軟水を使用するか硬水用のシャンプーを使用して対処しましょう。
【注意】硬水で起こる髪質トラブル5選
海外で日本製のシャンプーを使用していつもと違う洗い上がりを感じた際は、硬水が原因の一つである可能性が考えられるでしょう。硬水を使用して髪を洗うと下記の5つのトラブルを引き起こします。
- 泡立ちが悪く洗浄効果が下がる
- きしむ・固くなる
- ベタつく
- 乾燥する
- 頭皮がかゆくなる
それぞれ詳しく解説していきます。
泡立ちが悪く洗浄効果が下がる
硬水に含まれる、カルシウムやマグネシウムの金属イオンが、シャンプーの泡立ちを阻害します。硬水の硬度が高くなるにつれて泡立ちが悪くなるのは、知っておきたいポイントです。
軟水用のシャンプーには、泡立ちや洗浄力を発揮するために界面活性剤が含まれています。界面活性剤が水や油を結びつけることで汚れを弾き出す役割をしています。
しかし、硬水に含まれる金属イオンと界面活性剤が反応すると、水に溶けない石鹸カスを発生させてしまうため注意しましょう。シャンプー本来の役割を発揮できないだけでなく、泡立ちが悪いからと量を増やして無駄遣いになるかもしれません。
シャンプーの量を増やしても泡立ちや洗浄力は変わらないため、消費量だけが増えることのないよう気をつけてください。
きしむ・固くなる
軟水用のシャンプーと硬水で髪を洗うと、シャンプーに含まれる界面活性剤と硬水の金属イオンが反応し、水に溶けない石鹸カスが発生します。一度髪に付着すると水に流れにくいため、髪に石鹸カスが蓄積されないよう気をつけたいところです。付着したまま放置すると、髪がきしんだ手触りになってしまうでしょう。
また、硬水でトリートメントをした場合でもシャンプー同様きしんだ手触りになってしまいます。髪は、ダメージを受けるとマイナスの電荷を持つ部分が露出します。そこへ金属イオンが付着してしまうと、トリートメント成分の浸透を邪魔してしまうのです。硬水には硬水用のシャンプーやトリートメントを使うなどの対策が必要です。
ベタつく
硬水でシャンプーすると泡立ちが悪いためしっかり洗えていないと不安になり、ついシャンプーを多く使ってしまいがちですが、それにより洗い残しなどがベタつきを生む場合があります。そればかりか、髪に付着する金属イオンが増え、髪や頭皮環境の悪化を招く恐れがあります。
ベタつきの発生を和らげるためには、しっかりとゆすぎ、水かシャンプーを変更するなどの対策を心がけてはいかがでしょうか。
乾燥する
硬水地域で販売されているシャンプーは、硬水用に作られているため、軟水用のシャンプーに比べて洗浄力が高い傾向にあります。洗浄力の高いシャンプーを使用すると、汚れをしっかり落とすだけでなく、髪にまで強いダメージを与えてしまう可能性があります。
そのため、髪のダメージやパサつき・乾燥には注意しましょう。硬水地域で販売されているシャンプーを使用する場合は、洗浄力や含まれる成分に着目しながら選ぶように気をつけてみてください。
頭皮がかゆくなる
軟水用のシャンプーと硬水で髪を洗うと、泡立ちや洗浄力が悪いため、頭皮の余分な皮脂が落ちきれず頭皮がかゆくなることがあります。一方で、硬水に対応する洗浄力の強いシャンプーを使用しても、必要な皮脂まで落ち頭皮が乾燥してかゆくなる可能性があります。
頭皮にかゆみが出たら、放置せず医療機関を受診したり医師に相談するなどしてみてください。
【国内】水の硬度が高い地域
日本には、軟水が多いといわれている一方で、硬度の高い地域があります。国内の水道水はほぼすべての地域で軟水といえますが、そのもととなる原水では、硬度の高い地域があります。
特に硬度が高い地域は、千葉県や埼玉県です。次に高い地域は、熊本県や沖縄県です。全体的には、関東地方でやや高く、東北地方では低い傾向にあります。
関東地方で硬度が高い理由は、石灰岩を含んだ関東ローム層があるためです。また、沖縄は、石灰岩層から形成されているのが要因です。水が石灰岩に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分に浸透されるため、硬度が高くなります。
髪を洗う際は、硬水によって髪や頭皮にトラブルが起こりやすいため、硬度が高い地域にお住まいの方は、よりヘアケア用品を重視して選択してはいかがでしょうか。
4つの対策|硬水地域でできる方法
硬水地域で髪を洗う際にできる4つの対策について解説していきます。
- 軟水器や軟水化シャンプーを使う
- シャンプーは2〜3日に1回
- 非イオン系シャンプーに変える
- 硬水地域でシャンプーを買う
硬水地域だからといって諦めずに適切な対策をすれば、髪や頭皮トラブルを防げるでしょう。
軟水器や軟水化シャワーを使う
毎日使用するシャワーの水を、硬水から軟水に水質を変えることで、髪や頭皮のトラブルを防げる可能性が高まります。
水質を変える方法は、軟水器や軟水化シャワーを採用すること。硬水に含まれているカルシウムやマグネシウムを、イオン交換樹脂に通水して軟水に変換できます。軟水器には、浴室の水栓に接続するタイプなどがあり、設置には工事が必要です。
また、手軽に軟水化できる方法として、軟水化シャワーがあります。シャワーヘッドを軟水化シャワーに交換するだけで、硬水を軟水に変換できます。しかしながら、永久的に使えるのではなく、カートリッジを定期的に交換する必要がある点に注意しましょう。
水質を変えることでまた非イオンシャンプーは、乳化・浸透・分散の効果が高い点も大きなポイントですお風呂や排水溝の掃除が楽になるのもポイントです。お風呂に水垢やぬめりがつきにくくなるため、掃除する手間が少なくなるメリットもあります。ヘアケアだけでなく掃除の手間を省きたい方も軟水器や軟水化シャワーを取り入れてはいかがでしょうか。
シャンプーの頻度を減らす
シャンプーの回数を、1日1回ではなく2〜3日に1回と減らしてみるのもよいでしょう。毎日シャンプーすると、金属イオンを髪に付着させることになり、髪や頭皮に与えるダメージも大きくなります。シャンプーの頻度を減らすことで、髪や頭皮のダメージを抑えられます。
また、シャンプーを使用せずにお湯だけで洗う場合でも、硬水のお湯では髪や頭皮にトラブルが起こる可能性が高くなります。硬水が頭皮や髪につくと、カルシウムイオンと皮脂が結合し脂肪酸カルシウムを発生させます。これが頭皮や髪がベタつく原因になるため、注意しましょう。
毎日シャンプーできないことがストレスなら、ドライシャンプーを併用しましょう。ドライシャンプーは、その名の通り水がなくても髪を清潔にできます。アルコール成分で消毒できるうえ、皮脂吸着成分でベタつきを抑えられる優れものです。
ほかにも、スプレータイプやジェルタイプ、パウダータイプなどがあり、塗布後は洗い流さないのもポイントです。国内にもさまざまなタイプがあるため、硬水地域に出かける際に持参できるでしょう。ただし、完全に汚れや皮脂を落とすことができないため、連続して使用するのは避けたいところです。
非イオン系シャンプーに変える
毎日髪を洗わないと気持ちが悪いと感じる方は、非イオン系のシャンプーに変えてみましょう。シャンプーに配合されている界面活性剤には、陰イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤があります。
非イオン系は、水に溶けてもイオン化しない低刺激の成分です。イオン化しないため、髪や肌に優しくベビー用のシャンプー等にも使われています。非イオン系シャンプーを探すときは、下記の成分が記載されているか確認すると良いでしょう。
デシルグルコシド |
泡立ちと洗浄力が良く、低刺激ながら高い脱脂力をもつ |
ラウリルグルコシド |
植物の「糖」由来の洗浄成分で赤ちゃんや敏感肌の方に良い |
ラウラミドDEA |
洗浄力は弱めながら増粘作用や乳化作用で泡立ちが良い |
コカミドDEA |
気泡性や増泡性に優れ、泡立ちをよくする |
また非イオンシャンプーは、乳化・浸透・分散の効果が高い点も大きなポイントです。一方で、洗浄力が弱い点や温度変化に弱い点、泡立ちが弱い点などのデメリットがあります。しかし、非イオン系シャンプーを使用することで、マイルドな刺激でありながら髪がギシギシごわごわする問題を払拭することができるでしょう。
硬水地域でシャンプーを買う
海外の硬水地域では、硬水と相性の良い軟水地域よりも硬水用のシャンプーが販売されています。
日本には硬水用シャンプーが少ないため、海外であれば現地で調達するとその地域の硬度に合うシャンプーが見つけやすいです。ただし、シャンプーによっては洗浄力が強いものや刺激が強いものがあるため、成分表示を確認してから購入することが大切です。
まとめ
海外や水の硬度が高い地域で髪で洗うと、きしんだり固さを感じやすいのは、硬水が原因です。
硬水は、カルシウムやマグネシウムの金属イオンを含んでいます。シャンプーに含まれる界面活性剤と金属イオンが反応することで、金属イオンを含んだ石鹸カスが髪に付着します。そのため、肌触りが悪くなったり頭皮トラブルを起こしやすくなります。
硬水から髪や頭皮を守るためには、軟水器を使用したり硬水用のシャンプーを使用したりして対策をしてはいかがでしょうか。水質やシャンプーに合わせた方法なら、きしんだりや固くなることを防ぐことができます。
海外へ渡航する方も、国内の硬水地域にいる方も、適切なヘアケアを意識して、綺麗な髪を守ってはいかがでしょうか。