自分の髪の毛をカットして寄付するヘアドネーション。髪の毛(ヘア)と寄付(ドネーション)の2つの言葉を掛け合わせてできました。どなたでもできるボランティア活動として注目を集めています。
この記事では、ヘアドネーションをする方法や条件、手順についてご紹介します。併せて、どのくらいの長さが必要か、子どもでも寄付できるのかなどのよくある質問についても、回答とともにまとめました。
ヘアドネーションに興味があるけれど、やり方がわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
ヘアドネーションは【髪の毛の寄付】
ヘアドネーションは、カットした自分の髪の毛を寄付するボランティア活動です。髪の毛を寄付したい方は、美容室や自宅でカットした髪の毛を、ヘアドネーション活動をしている団体などに送付します。
寄付した髪の毛は、医療用ウィッグの製作に役立てられます。医療用ウィッグとは、主に病気や脱毛症などで髪の毛を失った方に向けて開発されたウィッグです。ヘアドネーションは、主に小児がんや白血病などの病気や、脱毛症や事故により髪の毛を失った子どもたちへ向けて、無償で提供するために始まった取り組みです。
ヘアドネーションは、アメリカの団体から始まった活動で、日本では2009年からJapan Hair Donation&Charity(JHD&C)が活動を始めています。現在では、いくつかの会社やNPO法人が活動しており、ヘアドネーションの知名度もアップしてきています。
ヘアドネーションの現状と必要性
近年、ヘアドネーションの知名度は上がり、興味を持つ方や実際に寄付する方が増えています。しかし、「ヘアドネーションを通して社会貢献に繋げたいがハードルが高い」と感じている方が多いのも事実です。
この章では、このようにハードルを感じている方々が実際に挑戦できるよう、ヘアドネーションの必要性について解説します。
- 髪の毛の悩みを持つ人は10代からいる
- 一人分のウィッグは30人分の髪が必要
- 寄付した髪は医療用ウィッグになる
上記3点を見ても、寄付した髪は医療用として役立てられるほか、量産するためにはより多くの寄付が必要だとわかるでしょう。
髪の毛の悩みを持つ人は10代からいる
ヘアドネーションで作られた医療用ウィッグの提供は、18歳以下の子どもを対象としています。そのため、10代の子どもたちが病気や怪我が原因で、髪の毛に対する悩みやコンプレックスを抱いていることがわかります。
しかし、ボランティアによる無償活動ですべての子どもたちへ提供するには、それだけ協力も必要です。現在では、申し込みから提供までに時間がかかってしまったり、新規申し込みを受け付けできなかったりと、課題がある団体もあります。
一人分のウィッグは30人分の髪が必要
一人からの寄付で一人分のウィッグを完成できるわけではありません。ウィッグを一つ作るには、約30〜50人分の髪の毛が必要だと言われています。これだけ多くの量が必要な理由は、寄付された髪の毛から、規定に合う髪の毛しか使われないからです。
医療用ウィッグは日本工業規格(JIS)に沿ってパッチテストや堅ろう度試験をクリアしなければなりません。そのため、寄付された髪の毛がすべてウィッグになるわけではありません。
寄付した髪の毛は医療用ウィッグになる
ヘアドネーションで寄付した髪の毛は、医療用ウィッグとなり子どもたちへ寄付されます。商業目的での生産・販売ではないため、利益をさらに増産費用にまわすこともできません。
そのため、ヘアドネーションをしたいと考える方の善意やボランティア活動がないと続けられない支援とも言えるでしょう。現状では、ヘアドネーションに関心はあるけれど、実際に行うにはハードルを感じている方が全体の約77%もいます。この77%の方たちがハードルを感じなくなるような、啓発活動を行うことも課題の一つと言えるかもしれません。
ヘアドネーションの手順
ヘアドネーションに挑戦するための手順を説明します。ヘアドネーションは、自分自身が主体となって行うボランティア活動です。
そのため、以下4つの手順をしっかり確認しておきましょう。
- カットする美容室を決める
- ゴムで束ねてまとめる
- 注意事項や送り先を最終チェックする
- NPO法人などに送る
それぞれ詳しく説明していきます。
カットする美容室を決める
まず、ヘアドネーションをするにあたって、髪の毛をカットしてくれる美容室を探しましょう。ヘアドネーションに賛同している美容室が全国にあるため、その中から選べば、依頼もスムーズにできるでしょう。
もちろん、セルフカットした髪を寄付することも可能です。しかし、既定の長さを満たしているかチェックしたり、小分けにした髪を束ねたりなど一人では大変だと感じる作業も多いでしょう。なるべくプロにサポートしてもらいながらカットするのが良いでしょう。
ゴムで束ねてまとめる
髪の毛をカットする前に、適切な量感で髪を束ねる必要があります。また、束ねたゴムの上1cmの箇所をカットするなど、細かい決まりもあるため注意しましょう。
ヘアドネーションに対応している美容室でカットしてもらう場合は、適切なボリュームで束ねてくれます。髪の毛が完全に乾いた状態で、ゴムの1cm上をカットするなど、カットに関する必要な規定を全てお任せできるのは心強いです。
美容室でのカットなら、ヘアドネーション用の髪をカットしたあとに、通常のカットメニューと同じようにスタイリングしてくれます。美容室を出る頃には、新しい髪型を楽しめるのも良い点です。
注意事項や送り先を最終チェックする
ヘアドネーション用に髪の毛をカットし終えたら、発送準備に移ります。送り先の団体によっては、髪の状態を記入するドナーシートの用意を求められる場合もあります。
送付する髪の梱包の仕方や、必要書類などは団体により異なるため、必ず確認しましょう。
NPO法人などに送る
ヘアドネーションの髪の毛は、寄付したい団体宛に送付してください。到着後の確認連絡などはない場合が多いので、追跡サービスのある送付方法が良いでしょう。
◆JHD&C
団体名 |
JHD&C事務局 |
郵便番号 |
〒530-0022 |
住所 |
大阪市北区浪花町13-38 千代田ビル北館7A |
宛先 |
NPO法人JHD&C事務局 |
団体名 |
和歌山刑務所 白百合美容室 |
郵便番号 |
〒640-8226 |
住所 |
和歌山市小人町29番地 和歌山市あいあいセンター福祉交流館3F |
宛先 |
和歌山市社協・ボランティアセンター内 白百合美容室係 |
JHD&C事務局には2か所の送り先があります。
ただし、白百合美容室に髪の毛を送る際は、必要書類や記入の仕方が異なるため、事前に公式サイトで確認してみてください。
◆つな髪
団体名 |
ウィッグの贈り物で広がる輪つな髪 |
郵便番号 |
〒530-0001 |
住所 |
大阪府大阪市北区梅田3丁目3₋45 マルイト西梅田ビル5F |
宛先 |
(株)グローウィング つな髪 |
◆NPO法人HERO
団体名 |
HAIR DONATION PROJECT |
郵便番号 |
〒981-8003 |
住所 |
宮城県仙台市泉区南光台2丁目13-1 |
宛先 |
NPO法人HERO ヘアドネーションプロジェクト係 |
髪の毛の髪質や条件などを考慮しながら、対応可能な団体に送付すると良いしょう。場合によっては、髪の毛の送付受付を停止している場合もあるので、事前に確認してから送付してみてください。
ヘアードネーションの注意点
ヘアドネーションに使用できる髪の毛にはいくつか条件があります。
以下の注意点を良く確認し、基準を満たした髪の毛であるか確認しましょう。
- 受付できない髪色・髪質がある
- 長さは31cm以上必要
- 乾いた状態でカットする
以下で、それぞれ詳しく説明します。
受付できない髪色・髪質がある
ヘアドネーションで送付された髪の毛は、色合いや髪質に個人差があります。集まった髪の毛は、トリートメント処理をして統一感のある色合いや髪質に整えられます。
そのため、髪の色やパーマがかかっていても受け入れ可能なのかどうかは、団体により対応が異なります。
団体名 |
寄付における条件 |
JHD&C |
・カラー・パーマ・ブリーチ・グレイヘアもOK ・年齢、性別、国籍はこだわらない(暗色) |
つな髪 |
・カラー・パーマ・ブリーチ・グレイヘアNG ・年齢、性別、国籍にはこだわらない(髪の毛は暗色) |
NPO法人HERO |
・パーマ・ヘアカラー・ブリーチ・縮毛矯正の場合でも 過度なダメーががなければ問題なし |
長さは31cm以上必要
ヘアドネーションで寄付するためには、髪の毛は31cm以上の長さが必要です。
髪の毛の長さは31㎝以上必要であることは変わりませんが、3団体それぞれ少しずつ条件が異なります。
団体名 |
特徴 |
JHD&C |
・31cm以上の長さが必要 |
つな髪 |
・31〜35cm:ロングウィッグは作っていないため。 ・35cmを超える髪の毛は調整してくれる |
HERO |
・31㎝以上の長さが必要 ・50cm以上の長い髪の毛も歓迎 |
それぞれの団体により多少異なるものの、31㎝以上の長さという条件は必須と言えます。また、ロングウィッグを作るための50㎝以上の長い髪の毛を送付したい場合は、対応している団体へ送りましょう。
「だいたいの長さでいいかな」「もう少しで31cmになるから」と安易に規定に満たない髪の毛を送ることはやめましょう。少しでも基準に満たない髪の毛は使用できなくなってしまいます。あと半年待つことで規定を満たせるなら、きちんと伸ばしてから送るように配慮してください。
乾いた状態でカットする
ヘアドネーション用の髪は、完全に乾いた状態でカットしなければなりません。少しでも湿った状態でカットしてしまうと、雑菌やカビが繁殖する原因となるためです。
また、髪が濡れていると傷みが出やすくなります。これでは、寄付しても届いた時にはダメージの多い髪だったとなり、ウィッグに使用できないかもしれません。
ドネーションカットをする際は、必ず乾かしてクセなども伸ばした状態で行いましょう。
ウィッグが作られる手順を紹介
医療用ウィッグはどのように作られるのか手順を紹介します。
- 届いた髪の毛を仕分けする
- トリートメント処理
- 髪の毛を植え込む
一つずつ見ていきましょう。
届いた髪の毛を仕分けする
髪の毛が届いたら、仕分けをします。仕分けの内容は、髪の長さやカラーの有無です。
長さはぴったり31cmなど、同じ長さのものをピックアップし、規定に満たない短い髪は除外されます。除外された短い髪は、美容師がカット練習に利用するマネキンや、シャンプーの開発会社などに試作用の髪として販売するなど有効活用されます。
トリートメント処理
仕分けが完了した髪の毛は、専用の工場でトリートメント処理を行います。
トリートメント処理の手順は以下のとおりです。
- キューティクルを除去する
- 髪の毛を染める
- 髪の毛をほぐして束ねる
- 脱水し乾燥する
- ブラッシングする
- 仕分けをして検品する
- 髪の毛を整えて結束する
髪の毛のキューティクルを取り除き、ウィッグとして使いやすい素材になるように調整します。キューティクルの除去が完了したら、染毛やブラッシングで整えていきます。
送られてくる髪の毛は、それぞれ髪色や質感が異なるため、均一になるようにする作業が必要です。検品が完了すると、ウィッグ作りへと進みます。
髪の毛を植え込む
トリートメント処理を終えた髪は、医療用ウィッグを作るメーカーや工場へと送られます。専門の職人により、ベースとなる生地に植えこむ作業を行います。
ベースの生地は頭皮を覆う帽子のようなもので、通気性に優れているのが特徴です。毛の根元や毛先を揃えたり、くせの向きを揃えたりして、より自然に見えるように調整しながら1本1本手作業で植えこまれていきます。
ヘアドネーションに関するよくある質問
ここからは、ヘアドネーションに関する質問で、よく挙げられるものをご紹介します。
髪の毛の寄付を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
どれくらいの長さから寄付できる?
送付先により条件は異なりますが、「31cm以上」を一つの目安として覚えておくと良いでしょう。
つな髪のようにロングウィッグを作らない団体では、髪の長さは31cm〜35㎝と決められています。一方で、ロングウィッグを作っているJHD&CとHEROでは、35㎝以上の髪の毛も受付しています。女性に需要の多いロングヘアのウィッグを作る場合は50cm以上の髪の毛が必要になる事もあるため、長いほど喜ばれることもあるでしょう。
特にHEROは、公式サイトにて50cm以上の髪の毛が足りないと表明しています。ロングヘアを寄付したい方は、カット前に何cmになるか確認してから送付先を決めるのも良いでしょう。
カットはどこですればいい?
ヘアドネーションのカットは、できるだけ活動に賛同している美容室や理容室で行うのが良いでしょう。ヘアドネーション用にカットしたいと伝えるだけで、長さを測ったり髪を束ねたりするのを協力してもらえるでしょう。
また、髪の毛を濡らす前にカットするなど、通常のカットメニューとは対応が異なります。そのため、ドネーションカットに慣れている美容室にお願いするのが安心です。
ヘアドネーションに適した髪の毛ってあるの?
ヘアドネーションに適しているのは、傷みやくせの少ない髪の毛です。
とはいえ、極端に傷んでいる髪の毛でなければ、カラーやパーマをかけていても大丈夫なところが多くあります。
髪の状態は、寄付する団体によって条件が異なると知っておきましょう。特に、パーマ・カラー・ブリーチ・グレイヘアは、対応してくれるところとしてくれないところがあります。
ヘアドネーションのためにこれから伸ばそうと考えている場合は、カラーやパーマはせずに、適度なトリートメントでダメージを軽減するよう心がけましょう。
子どもでも寄付できる?
ヘアドネーションに年齢制限は設けられていません。髪の毛の長さが31cm以上であり完全に乾いているなど、寄付の条件を満たしていればどなたでも寄付できます。
ウィッグを申し込むにはどうしたらいい?
ヘアドネーションの寄付先の団体では、医療用ウィッグがほしい方からの申し込みも受け付けています。医療用ウィッグを希望する場合は、各団体の公式サイトから申し込みしてみてください。
医療用ウィッグができるまでのフローや、申し込みできる種類なども団体により異なります。複数の団体を比較検討し、自分に合ったウィッグがもらえる団体へ申し込みましょう。
まとめ
医療用ウィッグが必要な子どもに向けて、ウィッグの素材になる髪の毛を提供するのがヘアドネーションです。どなたでも自分の髪の毛を伸ばすだけで参加できるボランティア活動だと言えます。
ヘアドネーションをする場合は、傷みやくせが少ない長い髪が喜ばれます。サラツヤ髪を目指して日頃からケアしている髪の毛なら、ヘアドネーションに向いているといえるでしょう。また、これから寄付したいと考えている方は、カラーやパーマを控え、適度にトリートメントなどのケアをすると良いでしょう。
ヘアドネーションをする方が増えると、医療用ウィッグの生産が進むため、寄付が少ない・生産が追いつかないといった課題も解決に近づくでしょう。「長い髪を切りたい」「ボランティア活動がしたい」など、少しでもヘアドネーションの条件に当てはまる方は、ぜひ活動に参加してみてください。