頭皮のかゆみや赤みは頭皮湿疹の可能性があり、早めに対処することが大切です。市販薬で改善する場合もありますが、症状によっては医療機関への受診が必要なこともあります。
そこでこの記事では、頭皮湿疹の原因や治療薬の種類、予防方法について詳しくご紹介します。時々頭皮がかゆくなる方や頭皮湿疹について気になっている方は、参考にしてみてください。
この記事でわかること!
頭皮湿疹とは
頭皮湿疹は、頭皮の表層に起きる炎症です。表層とは、皮膚の表皮や真皮上層(真皮の中でも表皮に近い部分)のことです。
皮膚は、表面から表皮・真皮・皮下組織という順で構成されています。表皮は5層構造で、ターンオーバー(新しい細胞を作り出し、古い細胞を落とす)を繰り返しながら肌を再生しています。また、水分の保持や外部からの刺激から肌を守るといった役割を持っています。
表皮の下にある真皮は皮膚の大部分を占めていて、神経や血管、毛根などが含まれている他、皮膚の弾力性を担っています。
頭皮湿疹を発症すると、皮膚が厚く硬くなったり真皮までただれたりする場合があるので、早めに治療することが大切です。
頭皮湿疹の主な症状
頭皮湿疹には種類があり、発症原因に違いもあります。しかし、症状に関しては、共通している部分がいくつかあります。
それでは、頭皮湿疹の主な症状についてわかりやすく解説していきます。
頭皮にかゆみを感じる
頭皮湿疹を発症した場合、頭皮にかゆみを感じるケースが多いです。
頭皮が炎症を起こすと、ちょっとした刺激でもピリピリとした感覚がある他にも、かゆみも感じます。頭皮のかゆみに耐えきれず掻いてしまうと、肌を傷付けて炎症の悪化を招いてしまうため注意が必要です。
さらに、患部を掻いた事によるかさぶたや炎症の悪化した部分からは、フケが出るようになります。そのため、頭皮の炎症やかゆみに気付いたら、まず掻かないよう意識しながら、少しでも症状が改善するよう様々なケアを進めていくのが大切です。
頭皮が荒れてシャンプーなどがしみる
炎症の起きている部分は ただれたり、がさついたりした状態です。また水疱やブツブツ、かさぶたなども発生していることがあり、外部からの刺激に弱くなっています。
そのため、シャンプーや整髪料に含まれる成分が炎症を起こしている肌に触れると、強い刺激を与え、ヒリヒリとした痛みが起こります。
また、炎症を起こしている間は、ヘアカラーを控え、日傘や帽子などで日焼け対策をしましょう。
頭皮が赤くなる
頭皮に何らかのトラブル、炎症が発生した場合、様々な症状と同時に紅斑という赤みも発生します。例えば、頭皮湿疹の脂漏性皮膚炎や接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎など、どの種類でも頭皮に赤みが生じます。
頭皮湿疹の主な原因
ここからは、頭皮湿疹の主な原因についてわかりやすく解説していきます。
体質に合わないシャンプーやコンディショナーによるアレルギー反応
体質に合わないシャンプーや整髪料、コンディショナー、日焼け止めスプレーなどを使用し続けていると、強い刺激により頭皮湿疹を引き起こすことがあります。
例えば、接触皮膚炎の刺激性接触皮膚炎の場合は、特定の刺激に対して強く反応し、かゆみや赤みといった症状が現れます。原因物質は人によって異なり、ヘアカラー剤やシャンプーなどで反応するケースもあります。
シャンプーやブリーチなどを行った後に頭皮が腫れたりかゆくなったりした場合は、頭皮湿疹を疑っても良いかもしれません。
真菌が頭皮で繁殖
頭皮で真菌が繁殖することも、頭皮湿疹を引き起こす原因です。脂漏性湿疹は、皮脂の分泌量が多い状況で常在菌のマラセチア菌が繁殖した場合に発症する皮膚炎です。背中や顔の他、頭皮にも発生することがあり、主に皮膚の赤みやフケに似た鱗屑(りんせつ)といった症状が見られます。
特に皮脂が分泌しやすい部位では、症状が進行しやすいと言えます。マラセチア菌は免疫力の低下やストレス、睡眠不足などによって増殖することがある他、食事の栄養バランス、皮脂分泌量なども影響していると考えられています。
頭皮の乾燥によるバリア機能の低下
頭皮湿疹の皮脂欠乏性皮膚炎(乾燥性皮膚炎)は、頭皮や肌の乾燥に伴うバリア機能の低下が原因で起こる炎症です。肌のバリア機能は、表皮の角層によって維持されています。
しかし、乾燥肌以外にも、洗い過ぎ、熱いお風呂への入浴などによる皮脂や水分不足が、バリア機能の低下をもたらします。さらに肌のバリア機能が低下すると、ちょっとした刺激にも反応し、頭皮のかゆみや赤み、肌のひび割れや細かなシワといった症状につながることがあります。
頭皮の傷から菌が入り込み炎症を起こす
皮膚の傷口から細菌に感染すると、膿痂疹(のうかしん)を招く可能性があります。膿痂疹は原因菌によって水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹に分けられます。
水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)は黄色ブドウ球菌が原因で起こり、赤ちゃんや幼児に多く見られます。水ぶくれやかゆみが主症状で、水ぶくれが破れてしまうと、びらんという肌のただれた状態へ変わります。さらに、水ぶくれに含まれていた液体に直接触れると、他の場所へ症状が広がる可能性もあるため、注意が必要です。
痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)はA群β溶血性レンサ球菌による感染で、年齢を問わずに発症します。赤みや膿の含まれた小さい水ぶくれが多数できるのが特徴で、破れるとその部分がかさぶたになります。発熱や痛みを伴うことがあるため、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
頭皮を強く洗ったり爪立てて洗ったりしている方は、頭皮の傷口から感染する恐れがあるので特に注意が必要です。
アレルギー体質による湿疹
頭皮湿疹の1つでもあるアトピー性皮膚炎は、頭皮にも起こる場合があります。
多くの患者さんは、アトピー素因というアレルギーになりやすい体質です。また、体質だけでなく、環境因子をきっかけで肌のバリア機能低下によるかゆみや赤みといった症状が出ることもあります。
他にもアトピー性皮膚炎は、ブツブツとした湿疹などを繰り返すことが特徴です。そのため、体質改善を含めた対策を進めていくのも重要なポイントと言えます。
頭皮湿疹をケアする方法
ここからは、頭皮湿疹をケアする方法について1つずつ確認していきましょう。
症状が比較的軽い場合は市販薬で対処できるケースも
頭皮に軽いかゆみやヒリヒリを感じている場合は、ステロイドや抗ヒスタミン薬などの市販薬で改善を見込めることがあります。
ステロイドには炎症を鎮める効果があり、頭皮湿疹向けの市販薬にも配合されています。また抗ヒスタミン薬は、頭皮のかゆみに対して効果的で、塗り薬の他、飲み薬なども販売されています。
マラセチア菌といった菌による頭皮湿疹の場合は、殺菌成分の配合された外用薬を塗布すると、菌の増殖抑制が期待できます。
皮膚科を受診して外用薬や内服薬を使用
頭皮にひどいかゆみがあったり、膿などの症状も見られたりする場合は、市販薬では対処しきれない可能性もあるため、皮膚科を受診しましょう。
医療機関では、頭皮湿疹の種類や症状の進行具合に合わせて外用薬や内服薬を処方してくれます。
例えば脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎を発症している場合では、ステロイド配合の外用薬で頭皮のかゆみや赤みなどに対処します。なお、炎症の状況によって処方されるステロイドの薬効(薬の強さ)は異なります。
また、膿痂湿疹(のうかしっしん)といった黄色ブドウ球菌による炎症に対しては、抗生剤などが処方され、他にもアレルギー反応による頭皮湿疹の場合は、抗ヒスタミン薬によって頭皮のかゆみをはじめとした症状を鎮めます。
症状に合わせて抗真菌薬配合のシャンプーを活用
頭皮湿疹の中でも脂漏性皮膚炎を発症した場合は、医療機関で抗真菌薬配合のシャンプーを処方してもらうことがあります。マラセチア菌の増殖や頭皮の炎症を抑えられるため、医師の判断によっては、外用薬とシャンプーによる治療を進めるケースもあります。
抗真菌成分の配合されたシャンプーは一般にも販売されているので、セルフケアから始めたい場合は試してみると良いかもしれません。ただし、市販のシャンプーで改善できない場合や頭皮に膿が発生しているなど症状がひどい場合は、医療機関で治療を受けましょう。
頭皮湿疹の市販薬を選ぶ時のポイント
市販されている頭皮湿疹の治療薬は、種類によって配合されている成分や使い方などに違いがあります。ここからは、頭皮湿疹の市販薬を選ぶポイントについてわかりやすく解説します。
購入前に成分と効果を確認
頭皮湿疹の症状を低減させるには、湿疹の状態や症状に合った市販薬を選ぶ必要があります。
主に頭皮や生え際のかゆみを抑えたい時は、かゆみ止め効果を持つ抗ヒスタミンが配合された塗り薬が適していると言えます。またメントール系の成分が配合された薬であれば、頭皮に清涼感を与えることで、かゆみを改善させる効果も期待できます。
一方、炎症を低減することが最優先の場合は、市販薬の中でも比較的薬効の強いステロイド系外用薬という選択肢もあります。ただし、長期間使用すると頭皮の赤みや肌の萎縮といった副作用が現れる可能性があるので、説明書に記載されている注意事項は必ず守りましょう。
いずれにしても、市販薬の購入に際しては薬剤師に相談し、適した薬を紹介してもらうのが安心です。
剤形を比較した上で検討する
錠剤やカプセル、顆粒、シロップなど剤形も、市販薬を選ぶ際の重要な比較検討要素です。
頭皮湿疹の剤形は、軟膏やローション、スプレー、飲み薬の主に4種類です。
指の方が塗りやすい方は軟膏タイプ、複数箇所に塗らなければいけない時は、ローションや1度で広い範囲へ塗布できるスプレーが適しています。
また、同じローションタイプでも、先端形状にバリエーションがあります。スポンジタイプは、広い範囲へ一気に薬剤を塗布できる特長があります。先端が細くなっているタイプはピンポイントに薬剤を浸透させられるので、髪の毛が邪魔して使いにくい部分にも直接塗布できることが強みです。
なお、頭皮以外にもかゆみを感じる場合は、飲み薬を選ぶと良いかもしれません。ただし、眠気などの副作用が起こることがあるので、使用前に説明書を確認しましょう。
頭皮湿疹の予防策
頭皮湿疹の発症を防ぐには、日々の頭皮ケアや清潔な環境づくり、体質改善など様々な点から対策を立てる必要があります。それでは、頭皮湿疹対策について紹介していきます。
頭皮や体質に合ったシャンプーを選ぶ
現在使用しているシャンプーの成分が自分の頭皮にとって強すぎないか、洗髪後の頭皮を確認してみましょう。
シャンプーは、頭皮に蓄積したホコリや皮脂汚れ、汗などを洗い落してくれます。しかし、うるおい不足な肌質や刺激を受けやすい肌質、体質によっては、洗浄成分の影響で頭皮の乾燥や炎症を招くおそれがあります。
もしシャンプー後に頭皮のカサつきやかゆみを感じた時は、刺激がマイルドなシャンプーを検討してみましょう。
刺激がマイルドなシャンプーは、肌への刺激が少ない成分で構成されており、製品によっては保湿効果を得ることもできます。
一方、皮脂分泌量の多い方は刺激がマイルドなシャンプーでは皮脂汚れを落としきれないため、通常のシャンプーで丁寧に汚れを洗い落とすのがいいでしょう。
強い力で頭皮に傷を付けないよう気を付ける
頭皮の傷は、細菌の侵入及び頭皮湿疹のリスクにつながります。
そのため、爪を立てずに洗うことが重要なポイントです。爪を立てた状態で洗髪すると、頭皮を傷つける原因になります。指の腹を使いながら頭皮を優しくマッサージするように洗えば、頭皮ダメージを避けながら汗やホコリといった汚れを洗い落とせます。
「丁寧に洗う=力強く頭皮を擦りながら洗う」ということではありません。指に力を入れながら洗っている方や特に洗い方を意識していない方は、この機会に力加減や洗い方を見直してみましょう。
寝具類を定期的に洗う
頭皮環境の悪化を防ぐには、頭皮と直接触れる寝具類にも目を向けましょう。
特に、枕カバーは髪や頭皮に直接触れる寝具です。寝汗や皮脂、フケなどが付着しやすいため、こまめに洗うよう心がけてください。洗う時間がない場合は、除菌スプレーなどを使用して少しでも清潔な状態を保つの効果的な方法だと言えます。
他の寝具類も定期的に天日干しや洗濯するようにして、ダニの繁殖を防いだりホコリや汚れの蓄積を避けたりすることが大切です。
不規則な生活を送っている場合は生活リズムを整える
頭皮湿疹はターンオーバーの乱れでも引き起こされる可能性があるため、規則正しい生活を心がけましょう。
ターンオーバーは、古い角質を排出して新しい角質を作り出す肌のサイクルで、通常は28日周期です。ただし、食生活の乱れや睡眠不足、ストレスなどが重なると、ターンオーバーのサイクルが乱れたりフケの増加につながったりすることがあります。
また、ターンオーバーの乱れは、頭皮の毛穴詰まりやバリア機能の低下を引き起こすことがあるため、生活習慣の改善も同時に行うようにしましょう。
まとめ
頭皮湿疹の薬は、市販でも外用薬や内服薬、シャンプータイプなど様々な形で販売されています。また、剤形や配合成分に違いがあるので、症状や目的に合わせて選ぶことも可能です。
薬に頼るだけでなく、頭皮湿疹を防ぐためにも頭皮のターンオーバーを正常に保ち、正しい頭皮ケアの方法を意識することも重要です。
しかし、頭皮のかゆみや赤み以外の症状も出ている方や、市販薬で症状が改善しない場合は、速やかに医療機関を受診し、治療に適した薬剤を処方してもらいましょう。