日本の伝統である和服に合わせて、様々な「和髪」があります。七五三や成人式で結ったことがある方も多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな和髪の歴史や種類、セルフでの結い方などを解説しています。
浴衣や着物を着るときにも役立つ内容をまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること!
和髪とは
和髪とは、文字通り日本の着物に合う伝統的な髪型のことです。
着物と言えば思い浮かぶような、ふっくらボリュームのあるまとめ髪が代表的な和髪として知られているでしょう。
成人式ではあまり見かけなくなりましたが、七五三のときには髪を結い上げてもらったという経験のある女性は多いのではないでしょうか。
しかし、代表的な和髪は結い上げですが、「日本人女性の伝統的な髪型」という意味で言えば、歴史を追って様々な和髪が存在します。
和髪の歴史
和髪の歴史を平安時代から解説していきます。
平安時代の垂髪
1200年前、平安時代に綺麗な着物をまとっていたのは貴族の女性です。
源氏物語絵巻に出てくる姫のように、長い髪をまっすぐに垂らした「垂髪」が当時の美しい和髪でした。
平安時代の美人の条件は切れ長の細い目、きめの細かい色白の肌、ふっくらとした頬…そしてサラサラで艶のある黒髪です。そんな綺麗な髪を美しく見せるためにも、着物に沿ってまっすぐに垂らした垂髪は貴族の女性にとって重要なポイントでした。
安土桃山時代の唐輪髷
鎌倉、室町、安土桃山時代に入ると、貴族から武士の時代となっていきます。
十二単ではなく動きやすい装いが主流となり、女性は長い髪を束ねるようになりました。
髪を一本に結んだ「下げ髪」、結んだ髪の先を輪っかにした「玉結び」が上流階級から庶民まで、幅広い階級に浸透していました。
アニメなどで見たことがあるという方もいるのではないでしょうか?
更に、安土桃山時代には遊女たちの「唐輪髷(からわまげ)」が登場します。現代でいうお団子スタイルのように、高い位置で髪を結い上げたスタイルです。ここで初めて髪を折って作る「髷(まげ)」が誕生しました。
日本髪の原型が「唐輪髷」だったと考えられています。
江戸時代に髪型が多様化
江戸時代には、「唐輪髷」をベースとした4つの結髪が誕生します。
「兵庫髷(ひょうごまげ)」「島田髷(しまだまげ)」「勝山髷(かつやままげ)」「笄髷(こうがいまげ)」の4つは、日本髪の代表と言われる基本の型となります。
江戸時代には数百種にも及ぶ日本髪が誕生し、年齢、職業、地域、身分、未婚、既婚などの条件によって髪型を変える文化もありました。
様々な結い上げは、アニメやドラマなどでも見かけることが多い形であり、一般的にイメージされる和髪の形に近いものです。
明治維新後の西洋化
明治維新後は西洋文化が入ってきたことで徐々に西洋化が進みます。
江戸幕府の崩壊によって断髪令が出され、男性が髷を切った一方で多くの女性は着物での生活を続けつつ、日本髪を結っていました。
明治18年に婦人束髪会が日本髪は不便で苦痛であること、不衛生であること、不経済で生活に支障をきたすことを指摘し、洋髪を推奨し始めます。そこで一気に西洋風の束髪が大流行します。さらに、イギリス結びや西洋上げ巻きなど多種多様なスタイルが作られ、雑誌や新聞を通して全国へ広がりました。
大正時代~現代へ
大正時代には、前髪と鬢(びん)を分けない「ひさし髪」や、両サイドの髪にウェーブをかける「耳隠し」などが流行り始めます。
大正末期には一部の女性の間で断髪が流行り、ショートヘアの女性はモダンガールと呼ばれるようになりました。
昭和にはパーマの普及でウェーブヘアが広まり、その後現代のようにヘアスタイルの多様化が進みました。
現代では和装や和髪を見かけることも減りましたが、再び和装がブームとなりつつある中で、再び和髪が注目されることも増えることが予想されます。
歴史から考える「和服に合う髪型」
歴史から考えると、和服に合う髪型は決して型が決まっているものではありません。
和服を着るならどのような髪型が良いのか3つの場面に分けて考えてみましょう。
普段のお出かけなら好きな髪型で
小紋などの普段着で、気軽にお出かけするのであれば好きな髪型で、夜会巻きのようなきちんとした感じのものでも良いですし、シニヨンヘアのように束ねた髪の毛をお団子で簡単にまとめたスタイルでも良いです。サラッと綺麗な髪を流すのも良いでしょう。
髪飾りなども合わせて楽しみましょう。
フォーマルな場ではきちんとした髪型で
訪問着などのフォーマルなお着物を着るときは、きちんとした髪型でまとめましょう。
ロングヘアの場合、夜会巻きを始めとしたきっちりまとめられる髪型を選ぶのがおすすめです。ショートヘアの場合は、華美な髪飾りは控えた方が良いでしょう。
イベントのときは着物に合わせて
成人式をはじめとするイベントごとで着物を着るなら、TPOに合わせた髪型を選びましょう。
成人などの式典なら華やかな結い上げでも良いですし、結婚式のような場では控えめに、それでいて綺麗な印象を受けるようなまとめ髪が良いでしょう。
着物や場面に合わせ、適切な髪型を選ぶことでより和装が映えるスタイルにまとまります。
セルフで和髪に挑戦してみよう
ここからは、セルフでできる和髪の結い方を解説します。
用意するものの紹介、和髪の構造の解説をした後、8段階に分けて手順を説明するので、着物を着るときの参考にしてください。
和髪は一発で綺麗に結い上げられるものではないというのが一般的な認識です。まずは何度か練習を重ね、着物を着たときに備えておくと良いでしょう。
ここでは、どんな着物にも合うシンプルな和髪の結い上げ方をご紹介します。
用意するもの
セルフで和髪を結う前に、まずは必要なものを用意しましょう。
・整髪料(ハードタイプのスプレーなど)
・毛ダボ(梳き毛)…10~15g程度
・アメピン…10本以上
・Uピン大…5本以上
・Uピン小…5本以上
・ヘアゴム…1個
・ダッカールピン(ヘアゴムなどでも代用可能)…毛量に合わせて2~3個
・コテ(なくても可)
リングコーム、アメピン、Uピン、ヘアゴム、ダッカールピンは100円ショップでも購入可能なので、自宅になければ事前にまとめて買っておきましょう。
コテはなくても和髪を結うことができますが、事前に巻いておくことで結い上げやすくなります。髪飾りとして簪(かんざし)があると華やかに仕上げることができます。
和髪の構造
和髪は、地毛で構成する上部(トップ)、土台、下部(襟足)に加えて「毛ダボ」と呼ばれるパーツでできています。
和髪は土台を中心に、髪で毛ダボを包むことで作られています。毛ダボを入れることで髪がふっくらとしたシルエットになるのです。ただ、毛ダボを包めるだけの長さが必要なので、最低限セミロングくらいの長さがないと地毛で和髪を結うのは難しいでしょう。
和髪を結う時は、土台の位置、毛ダボの量、毛先をまとめる位置を変えることでシルエットも変化するので、見た目の印象を変えられます。
手順1:ブロッキング
まずは髪をブロッキングしていきます。ブロッキングとは、この後の作業がしやすいように髪をブロックごとに分けていく作業です。
和髪を結うときは、両耳と頭頂部のやや後ろのポイントを繋いだラインで髪を分けましょう。
ブロッキングした前側の髪は、ダッカールピンかゴムで留めておきます。
手順2:土台作り
後頭部側の髪をきつく三つ編みにして、土台にしていきます。
根元を一度ゴムで結んでから三つ編みしたり、毛束をねじってしまってもOKです。
三つ編み、またはねじった毛束を平たく渦状にまとめ、アメピンを使って留め付けます。土台がポコッと盛り上がらないように、頭部に沿うように平たく留め付けるのがコツです。
土台がしっかり留められていないと、後々結った髪が崩れていってしまうため、きちんとチェックしつつ留め付けてください。
アメピンは、留めたい部分の毛流れに対して直角に交わるようなイメージで指すと崩れにくくなります。
土台はスプレーを使って固めておき、襟足の後れ毛もコームで撫でつけながら綺麗に整えてまとめてください。
手順3:毛ダボを乗せる
土台の上側に毛ダボを乗せます。
頭の巾に合わせて、楕円形に毛ダボを整えてから乗せていきましょう。厚みはお好みですが、後頭部の丸みに合わせてほど良く調整してください。
毛ダボを土台の上側に乗せたら、Uピン(大)で数か所留めます。このとき、毛ダボがズレないように何か所かにUピン(大)を指しておくと良いでしょう。Uピンは土台までしっかり届いていなくても大丈夫です。
手順4:上部の髪を下ろし櫛目を通す
毛ダボを手で押さえつつ、上部の髪を全て下ろしてきましょう。
毛ダボを隠すように髪の表面を上手くクシですいて整えます。このとき、毛ダボを一緒にすくってしまわないように注意してください。
表面を整えたら、後ろの低めの位置でひとつに束ねます。束ねた表面にスプレーを吹きかけ、乾く前にクシを通して髪の面を綺麗に作っていきましょう。
クシの筋を付けることを「櫛目を通す」と言います。
面を整えると仕上がりのツヤ感が増すため、念入りに整えてください。
手順5-1:渦を作りまとめて留める
毛束の根元をねじって根元に指をあて、毛束を渦のように巻きつけます。
そっと指を抜いて巻きつけた反対側に持って行き、渦になるように髪を巻いていきます。
渦ができたら、アメピンとUピン(小)で複数個所を留めて固定します。ただし、ピンを表に指すと見えてしまうため、下側の髪をすくい留めるようにして留めてください。
浮いた毛や支えきれない部分は、Uピン(小)で補修、補強してあげてください。
固定が終わったらスプレーを吹きかけ、髪を固めます。
手順5-2:渦が難しいときはシニヨンで代用
5-1のように渦を作って留めるのが難しいときは、シニヨンで代用することができます。
毛束の根元をシリコンゴムなど目立たないもので留め、ぐるっと巻きつけてアメピンで留めましょう。
髪が留まったらスプレーを吹きかけ、櫛目を通して整えてください。
手順6:シルエットを整える
コームの柄を使い、髪の表面が凹んでしまった部分を引き出して全体のシルエットを整えていきます。
強く引っ張ると抜けてしまったり崩れてしまったりするので、軽い力で調整するようにしてください。
このとき、少しだけ髪が耳にかかるようにしてみるとグッと雰囲気が柔和になり、大人っぽい和髪のシルエットに仕上がります。
手順7:前髪を整える
前髪が長い方は、サイドに流すのがおすすめです。前髪を斜めに流して髪の中にアメピンを入れ込むようにして留めるか、スプレーでしっかり固めてしまいましょう。
前髪が短い方は、雰囲気を見ながら適度に調整しましょう。もちろん、前髪ありの和髪も可愛らしくて素敵です。
前髪を整えるときは、アメピンが見えないように上手く隠すのがコツです。
手順8:かんざしを通して完成
最後に、かんざしを通して完成です。お好きなデザインのかんざしを土台に向かって差し込み、全体をチェックしましょう。
かんざしはTPOに合わせたものや、着物に合わせたものを選べると良いです。
和髪は丁寧に作り込み、美しく仕上げることが大切です。アホ毛や後れ毛などがあれば、細かくチェックしてスプレーと櫛目を通す作業を繰り返しましょう。
和髪のための便利アイテムを活用しよう
和髪は手順を追って挑戦してもなかなか難しいものです。
しかし、実は和髪を作るときに便利なアイテムがたくさん販売されているため、チェックしておきましょう。
和髪に結い上げてあるウィッグを持っておけば、それを被ることで簡単に綺麗な和髪のスタイリングができます。
また、部分的に使えるヘアピースなどがあれば和髪を結い上げる作業が一段と楽になります。
和装小物店などで販売されているので、気になるアイテムがあれば購入してみてください。毛量や髪の長さによって必要なアイテムが異なるので、一度結い上げてみて欲しいものをピックアップしておきましょう。
まとめ
和髪とは、日本の伝統的な髪型のことを指す言葉です。
現代では和髪と言えば結い上げたアップヘアが一般的ですが、歴史をさかのぼると垂髪という長い髪をまっすぐに下ろした状態のものが貴族の髪型として当たり前だった時代もあります。
江戸時代を境に急増した和髪の種類ですが、現代でもシンプルな和髪を和装に合わせてコーディネートする方もいます。
セルフで結い上げられる和髪もあるので、ぜひ挑戦してみてください。
自分で結い上げるのが難しければ、和装小物店などにある便利なアイテムを使ってみるのもおすすめです。
綺麗な和髪を結って、着物に合わせたコーディネートを楽しんでみてください。