髪をかきあげると頭皮が痛い、頭皮を触るだけ痛いといった症状は、頭皮の炎症によるものが多く、皮膚炎などの可能性も考えられます。放置すると痛みが強まる恐れもあるため、早めの対処が大切です。この記事では頭皮に痛みが出る原因と対処法、痛みをやわらげる方法を解説します。病院を受診すべきケースも合わせてお伝えします。
この記事でわかること!
髪をかきあげると頭皮が痛いときに考えられる原因
怪我をした記憶もないのに、髪をかきあげると頭皮が痛いとき、考えられる原因は次の5つです。
頭皮湿疹(皮膚炎)
髪をかきあげたときに痛みがある場合、頭皮湿疹が生じている可能性があります。
頭皮湿疹とは、皮膚の表層に起こる炎症の総称です。主な症状は頭皮の痛みや赤み、水疱(すいほう)、ムズムズとしたかゆみなどが挙げられます。
頭皮湿疹の原因は様々ですが、以下のような皮膚炎が代表的です。
肌に合わないシャンプーや薬剤などが原因で頭皮にかぶれや痛みが生じる
●脂漏性皮膚炎:
皮脂の過剰分泌によって常在菌「マラセチア」が異常に繁殖し、頭皮の赤みやかゆみ、フケなどを起こす
●毛包炎:
小さな傷から細菌が感染し、毛穴の奥の毛根を包んでいる「毛包」に炎症が起こる。赤みや毛穴周辺の腫れ、軽い痛みが生じる
頭皮湿疹は様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられており、はっきりとした原因を特定するのは難しいことがほとんどです。
とはいえ、セルフケアではよくならないことも多く、かゆみに耐えかねて掻いてしまうと悪化する恐れもあるため、症状が長引く場合は早めに皮膚科に相談しましょう。
帯状疱疹
帯状疱疹とは、免疫が低下しているときに水痘・帯状疱疹ウイルスによって発疹や水膨れ、痛みが起こる病気です。
顔や胸、腹部、背中、手足などにも現れますが、基本的には帯状に連なったものが1か所にまとまってできます。
このため頭皮全体ではなく、特定の部分が痛みます。
髪をかきあげたり、ブラシで髪をとかしたりすると痛むことで気付くことも多いです。頭皮がピリピリ・チクチクと痛む傾向にあります。
進行すると痛みが激しくなったり、ウイルスが増殖して治療に時間がかかったりするため、早めに治療する必要があります。
帯状疱疹が疑われる場合は皮膚科を受診し、抗ウイルス薬や痛み止めを処方してもらいましょう。
神経痛
髪をかきあげたり髪の毛をブラシでとかしたりするとチクチク・ズキズキ痛むのに、頭皮に赤みや湿疹などが見当たらない場合、神経痛や頭痛を発症しているケースも考えられます。
末梢神経が圧迫されたり、炎症を起こしたりすることで生じると考えられていますが、明確な原因は未だ分かっていません。
例えば、神経痛の一つである「後頭神経痛」の場合、耳の後ろや、首の付け根から後頭部にかけて、左右どちらかに刺すような・キリキリするような痛みを感じることが多いです。
痛みそのものは1日程度で自然に治りますが、繰り返す傾向があります。
そのほか、パソコンやスマホの長時間使用などで眼精疲労を起こすと、目の奥や後頭部に痛みが現れます。眼精疲労を放置すると頭痛が強くなることもあるため、適度に目を休ませましょう。
日焼け
頭皮が日焼けをすると、炎症による痛みや赤み、乾燥、かゆみなどの症状が現れることがあります。
強い紫外線を浴び続けると頭皮環境が乱れ、髪に十分な栄養が行き届かなくなり薄毛に繋がる可能性もあります。
自律神経の乱れ
これまで紹介した原因や症状にあてはまらない場合、自律神経の乱れによって頭皮の痛みが生じている可能性もあります。
ストレスや疲労、睡眠不足などによって自律神経のバランスが乱れると交感神経が優位に働き、血管が収縮します。その結果、血行が悪くなり、しびれや痛みに繋がることがあるのです。
髪をかきあげると頭皮が痛いときの対処法
頭皮が痛いときの対処法は症状によって異なります。ここでは、症状に応じた痛みの対処法を紹介しますので、無理のない範囲で取り入れてみましょう。
シャンプー方法を見直す
帯状疱疹が疑われる場合、頭皮を刺激すると痛む可能性があるため、シャンプーやブラッシングを控えましょう。
頭皮全体に炎症が見られる場合はシャンプー方法を見直し、頭皮環境を整えることが重要です。1日に何度もシャンプーすると頭皮の乾燥を招いてしまうため、シャンプーは寝る前の1日1回を基本としましょう。
シャンプーの際に爪でゴシゴシ擦ると頭皮を傷付けてしまうため、指の腹を使って優しくマッサージするように洗うのがポイントです。すすぎは38~40℃程度のぬるま湯を使い、泡が残らないようにしっかり流しましょう。
頭皮が濡れた状態で放置すると雑菌の繁殖を招くため、お風呂から上がったら早めにドライヤーで乾かすことも大切です。
低刺激のヘアケアアイテムを使う
シャンプーによって洗浄力が異なるため、頭皮の状態に合わせて選ぶことが重要です。
例えば頭皮湿疹(皮膚炎)や日焼けによって頭皮の痛みが出ている方、頭皮が乾燥しやすい方は、刺激がマイルドなシャンプーがおすすめです。「アミノ酸系」や「酸性石鹸系」など、マイルドな洗浄成分を使用したシャンプーを選びましょう。
一方、皮脂の過剰分泌によって脂漏性皮膚炎が生じている場合は、シャンプーの洗浄力が弱すぎると皮脂汚れが残ってしまうことがあります。
医師の指示に従い、皮膚科や市販で購入できる、抗真菌剤の成分が配合された「脂漏性皮膚炎用のシャンプー」を試してみましょう。
紫外線対策を徹底する
強い紫外線を浴びると皮膚はやけどを負ったようになります。頭皮に炎症が起こるケースもあるため、毎日の紫外線対策も重要です。
外出時は帽子や日傘、頭皮に使える日焼け止めスプレーなどを使用し、紫外線から頭皮を守りましょう。
ただし、帽子を被りっぱなしにすると頭皮の蒸れによって細菌が繁殖しやすくなってしまうため、適度に汗を拭くことも大切です。
頭皮環境を整える
頭皮の血行不良や乾燥など、痛みの原因が頭皮環境にあると疑われる場合は、頭皮へのアプローチも必要です。
頭皮が乾燥している場合は頭皮専用のローションを使い、保湿を心がけましょう。
また頭皮環境を整えるために、頭皮マッサージを取り入れるのもひとつの方法です。シャンプー時に頭皮を優しくマッサージすることで血行が良くなり、頭皮に必要な栄養や酸素が行き渡りやすくなります。
ただし頭皮湿疹(皮膚炎)や帯状疱疹、日焼けによる炎症が起こっている場合は、頭皮マッサージを控えてください。頭皮に触れるだけで痛い場合は自己判断でセルフケアを行わず、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
食生活を見直す
頭皮の健康を保つには糖質や脂質、塩分、加工食品の摂りすぎを避け、1日3食栄養バランスの良い食事を心がけることも大切です。タンパク質やビタミンB群、ビタミンA、ビタミンCなど、頭皮の健康維持に必要な栄養素も積極的に取り入れましょう。
睡眠時間を見直す
睡眠時間が不足すると自律神経のバランスが崩れるだけでなく、皮膚が一定のサイクルで生まれ変わる「ターンオーバー」が乱れ、古い角質が蓄積して毛穴を詰まらせてしまうことがあります。
毛穴が詰まると頭皮湿疹(皮膚炎)の悪化に繋がるため、十分な睡眠を取り、頭皮環境を整えましょう。
一日に必要な睡眠時間は個人差がありますが、成人の場合は6~8時間が目安です。少なくとも、1日6時間以上の睡眠時間を確保しましょう。
参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
頭皮の痛みをやわらげる方法
頭皮の痛みが軽度であれば、セルフケアによって一時的に症状をやわらげることも可能です。ここでは、頭皮の痛みをやわらげる方法を症状別に解説します。
外傷・皮膚炎による痛み
頭皮の外傷や炎症によって痛みが生じている場合の対処法を紹介します。
市販薬を使用する
外傷や皮膚炎の症状が軽度の場合は市販薬で対処できることがあります。
皮膚炎によって頭皮が痛い場合は、炎症を鎮める成分が配合された塗り薬が使用できます。神経痛や頭痛の場合は、鎮痛薬によって痛みの緩和が期待できます。市販薬などを購入する際は、登録販売者や薬剤師に相談しましょう。
ただし、症状によっては医療機関を受診すべきケースもあります。病院に行くかどうかの判断基準は次項で解説していますので、併せて参考にしてください。
冷やす
患部を冷やすことで、外傷や皮膚炎による痛みが低減することもあります。
冷やす際は、タオルでくるんだ保冷材や濡れタオルを当てましょう。保冷剤は長時間当てたり、直接当てたりすると凍傷になる恐れがあるので、注意して扱ってください。
帯状疱疹・自律神経の乱れによる痛みは温める
帯状疱疹や自律神経の乱れによって頭皮が痛い場合は、温めて血行を促すと楽になることがあります。できるだけ頭皮を刺激しないように注意し、入浴やカイロで温めましょう。
ただし、頭皮に帯状疱疹が出ている場合はシャンプーを控える必要があるため、どうしても洗いたい場合はぬるま湯で頭皮をすすぐ程度にしてください。入浴が難しいこともあるため、まずは医師に確認してください。
髪をかきあげると痛いときは病院に行くべき?何科に行く?
以下のような症状がある場合は放置せず、早めに病院へ行きましょう。
●痛みや違和感が強くなっている
●我慢できないほどの痛みがある
●症状が広範囲に及んでいる
●頭皮だけでなく全身に皮膚症状が出ている
●市販薬を5〜6日間使用したが症状に変化がない
以下では、症状ごとに受診すべき診療科を紹介します。
頭皮に炎症や湿疹があれば皮膚科
頭皮の痛み以外に炎症や湿疹、水疱、赤みなどの異常が見られる場合は、皮膚科を受診しましょう。症状によってはセルフケアによる改善が難しいため、早めの相談が大切です。
痛みの原因を自分で判断できない場合も、まずは皮膚科を受診すると良いでしょう。
頭痛や神経痛が続く場合は脳神経外科
頭皮に炎症や赤み、湿疹などが見られないものの、頭痛や神経痛が長引く場合は脳神経外科の受診を検討しましょう。脳神経外科では、レントゲンやMRI検査を用いて病気の有無を確認してもらえます。
抜け毛を伴う場合は薄毛治療専門クリニック
頭皮の痛みとともに抜け毛も見られる場合はFAGAを発症している可能性もあるため、薄毛治療専門クリニックを受診しましょう。
FAGAは進行型の脱毛症なので、放置すると抜け毛がどんどん増えてしまいます。 健康保険などの公的医療保険は、病気や怪我の治療に適用されます。薄毛治療は、美容目的の診療とみなされるため、治療費は全額自己負担となります。
薄毛治療専門クリニックには、抜け毛や薄毛に関する専門知識がある医師が在籍しています。初期段階で治療することが大切なため、早めに相談しに行きましょう。
参考:国税庁「医療費を支払ったとき」より
まとめ
髪をかきあげると頭皮が痛い原因は、頭皮湿疹(皮膚炎)や帯状疱疹、神経痛、日焼け、自律神経の乱れなど様々です。軽度であればセルフケアで痛みが和らぐことがありますが、症状が続く場合は放置せずに医療機関を受診しましょう。